第一章 一話

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 シズクから『会わないか』と誘われてから四日。  新一は一人、煙草を吹かしながら突っ立っていた。  近年、喫煙者に厳しい世界となったもので、指定された場所以外での喫煙は罰金とされている。  そういった経緯で、現在新一はまるで囚人のように狭苦しい空間で、見知らぬ社会人達と顔を合わせながら煙草を咥えていた。  外回りの帰りなのだろうか、ストレスが溜まっているらしい社会人の男は、眉間に皺を寄せながら煙草に火をつけようとしている。  どうにもガス切れのようで、火花が散るばかりで火が付く気配がない。 「どうぞ」  そう言ってライターを差し出すと、日本人特有の片手拝みしてライターを借り、火をつける。 「すみませんね」 「いえ」  短いやり取りをした後、スマホが揺れていることに気が付いた。  画面を見るとそこには見慣れない番号。  もしやと思って、煙草の火を消して、灰皿へ捨てながら外へ出る。  そのまま通話ボタンを押す。 「もしもし」 『あ、えっと……シンイチくんの電話でよろしいでしょうか』  聞こえてきたのは若い女性の声。  スマホには数名の女性のアドレスがあるが、その誰でもない。 「ええ、そうですけど……シズク?」 『あ! よかったぁ~……違ったらどうしよかと思ったよ、何度も確認しても、知らない番号へかけるのは勇気が要るよね!』  以前やり取りしたメールとはまた真逆の印象の声。  一言でいえば、中学生から高校生くらいの子供である。  (やっぱり、メールでの口調は緊張して形式ばった者になったのか)  そんなことを考えながら、新一は通話に意識を向ける。 「今どこ? さっきまで喫煙室にいたからそっち行くよ」 『じゃあ、ベターにハチ公前で!』 「……本当にベタだな」 『いいじゃんかー、私だっていっちょ前に女の子っぽい待ち合わせしてみたいんだよ!』  通話越しに聞こえる不機嫌そうな口調に、思わず新一は苦笑しながら歩くのだった。  
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