第一章 一話

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 平日とは言え、それなりに人の往来の多い駅前。  そんな場所で、会った事もない人と待ち合わせは正直面倒であった。  ハチ公には新一以外にも待ち合わせをしている人が沢山いる。  その中でシズクを探せとは、気が滅入るのも仕方がないといった所だ。  だが、結果は予想とは真逆だった。 「あ、シンイチくーん! こっちこっち!」  そこには、大きく手を振って新一を呼ぶ一人の女の子。  黒髪で腰まで届く様なロングヘアー、今の時代では珍しい和風な雰囲気を残した女の子。  身長はやや小さめだが、白のセーターと紺色のスカート、非常にシンプルだがその色合いが、彼女のキレイな髪の色を引き立てている。  先ほどの声では学生と思えたが、その雰囲気はしっかりとした社会人らしい空気を纏っていて、さらに彼女の年齢が分からなくなった新一だった。  新一は周りをキョロキョロと見渡すが、自分以外に彼女の視線の先に人はいない。  どうやら自分に声をかけているのは間違いないようだと判断する。 「あ~……、シズク、さん?」  伺う様に聞くと、花が咲いたような笑みで新一に笑う。 「シズクでいいよ、初めましてシンイチ君」 「よくわかったな、俺がシンイチだって」 「え? ああ、うん。なんとなくね!」  笑顔できっぱりと言われると、何とも言えない気持ちになりつつ、気持ちを切り替える。 「で、話をするんだよな。どっか入る?」  ちらりと駅前のスター○ックスを指すと『あ、こっちこっち!』といって新一の腕を引いた。  予想外かつ積極的なスキンシップに、内心どぎまぎしながらも新一は彼女の誘導に従い歩く。  すると大きな横断歩道に、一台の黒塗りの車が止まっていることに気が付いた。 (凄い車だな。漫画やとかで見るヤクザが乗ってるようなのとは違う、しっかりとした高級車だ)  そんな事をぼんやりとしながら見ていると、彼女はズンズンとその車へ新一を引っ張っていく。  まさか、という言葉が浮かぶ。  すると、扉がガチャリと開くと中から出てきたのは、四十代程に見える男。  広い肩幅、身長も百八十はる新一よりやや高い。  そしてなによりも、全身の筋肉が尋常じゃない。  スーツの上からでもわかる、鍛えられた肉体がはち切れんばかりに主張していた。
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