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平日とは言え、それなりに人の往来の多い駅前。
そんな場所で、会った事もない人と待ち合わせは正直面倒であった。
ハチ公には新一以外にも待ち合わせをしている人が沢山いる。
その中でシズクを探せとは、気が滅入るのも仕方がないといった所だ。
だが、結果は予想とは真逆だった。
「あ、シンイチくーん! こっちこっち!」
そこには、大きく手を振って新一を呼ぶ一人の女の子。
黒髪で腰まで届く様なロングヘアー、今の時代では珍しい和風な雰囲気を残した女の子。
身長はやや小さめだが、白のセーターと紺色のスカート、非常にシンプルだがその色合いが、彼女のキレイな髪の色を引き立てている。
先ほどの声では学生と思えたが、その雰囲気はしっかりとした社会人らしい空気を纏っていて、さらに彼女の年齢が分からなくなった新一だった。
新一は周りをキョロキョロと見渡すが、自分以外に彼女の視線の先に人はいない。
どうやら自分に声をかけているのは間違いないようだと判断する。
「あ~……、シズク、さん?」
伺う様に聞くと、花が咲いたような笑みで新一に笑う。
「シズクでいいよ、初めましてシンイチ君」
「よくわかったな、俺がシンイチだって」
「え? ああ、うん。なんとなくね!」
笑顔できっぱりと言われると、何とも言えない気持ちになりつつ、気持ちを切り替える。
「で、話をするんだよな。どっか入る?」
ちらりと駅前のスター○ックスを指すと『あ、こっちこっち!』といって新一の腕を引いた。
予想外かつ積極的なスキンシップに、内心どぎまぎしながらも新一は彼女の誘導に従い歩く。
すると大きな横断歩道に、一台の黒塗りの車が止まっていることに気が付いた。
(凄い車だな。漫画やとかで見るヤクザが乗ってるようなのとは違う、しっかりとした高級車だ)
そんな事をぼんやりとしながら見ていると、彼女はズンズンとその車へ新一を引っ張っていく。
まさか、という言葉が浮かぶ。
すると、扉がガチャリと開くと中から出てきたのは、四十代程に見える男。
広い肩幅、身長も百八十はる新一よりやや高い。
そしてなによりも、全身の筋肉が尋常じゃない。
スーツの上からでもわかる、鍛えられた肉体がはち切れんばかりに主張していた。
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