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その二人のやり取りを聞いてハッとする。
シズクをお転婆姫と揶揄する人物に心当たりがあったのだ。
「い、今のやり取り……」
新一が呟くと、おっさんはニヤリと笑みを浮かべる。
「お、気づいたか?」
「え? え?」
新一と男が自分を抜きに、眼で会話してるのに気づいたシズクはキョロキョロと二人を眺める。
「まさかアンタ、シロウなのか?」
「おうよ、こうやって会うのは初めてだな。よろしくなシンイチ」
その言葉に愕然とする。
シロウとは、シズクともダンジョンについて語り合う掲示板の仲間で、新一が心の中で「兄貴」と慕っていた人物である。
どっしりと構えた思考と、大らかかつ大胆な発想をする人物。
これと言ってダンジョンに対する知識は多くないが、それでも豪快でありつつもメンバー間の緩衝材の役割を果たした人物で、当初から新一が信頼していた人物でもある。
「マジか……シロウの兄貴が、おっさんだったのか」
「おい! 誰がおっさんだ! これでもまだ三十五だぞ!!」
「うそだろ!? どう見ても四十半ば過ぎだぞ!!」
「てめ、気にしてる事を!」
「うわあ!」
怒った顔で乗り出して、新一の隣に座ると、太い腕と分厚い胸板でヘッドロックしたた。
当然、手加減はしてくれているんだろうが、なによりも隣に座ってる圧迫感が凄まじい。
「ちょっと、彼を虐めないでよ! 大切な人なんだから!」
「おう、わかってるって」
「なら、離してくれよ……」
「おお、悪ぃ悪ぃ」
彼の拘束から解放された新一はゴホンと、咳払いをしてからシズクに向き合う。
「どういうことか説明してもらってもいいか?」
「え?」
きょとんとした顔でこちらを見る。
あまりにもすっとぼけた顔をするので、隣のシロウに視線を向けると『わるいな、普段はすげぇ頭いいんだがよ』と謝罪した。
「どうして、あの掲示板の二人が一緒にいるんだ? そして俺をどこへ連れて行くんだ」
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