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新一が問いかけると、シズクは小さく笑いながらこちらを見た。
「わからない?」
「全然わからねぇよ。非公式な情報を得たり、何処からかわからないが、俺の事を調べるくらい朝飯前の集団だってくらいだな」
そう答えると、うんうんとシズクが頷く。
「良く落ち着いてるわね、うん。保護して正解だったみたい」
「まだ保護を受けるとも言ってないんだがな」
「あら『我々の組織』の話を聞いて断れると?」
(やっぱりかよ……)
内心、メールアドレスを彼女に教えた自分を殴り飛ばしたいくらい恨んだ。
だが、それもすぐに辞める。
先ほど目の前のシズクは『速水新一さん』と呼んだ。
今日会うまで、俺はリアルに関しては何一つあの掲示板では溢していない。
先日一度だけ、東京付近に住んでいるという事だけをバラすミスをやらかしたが、その一回だけだ。
となれば、目の前にいる彼女……いや彼女たちは、会う以前からこちらの情報を得ていたと考えるのが妥当だった。
新一は陰謀論などを信じる質ではないが、今回ばかりはそれを少しは受け入れてもいいのではと思い始めていた。
「と、言うのも冗談で、実のところこちらとしては、頭を下げてでもこちらについてきてほしいくらいなのよね。……続きいいかしら?」
「……どうぞ」
「そのダンジョンについて、世界各国は多くの議論を進めているの。魔物の種族、生体、特徴、対応策、ダンジョンはなぜ生まれるのか、どうすれば被害を抑えられるか」
新一はその議題を聞いて、僅かに引っかかったような感覚を覚えた。
なんせ『その議題は、以前に終わらせた物ばかり』だったからだ。
「気づきました?」
「まさか……」
「ええ、ご想像の通りです。あの掲示板……私達を含めた各国の科学者が集った、簡易的な議題の場なんですよ」
思わず新一は頭を押さえて仰け反ってしまった。
ありえない。
そんなことをするバカがどこにいる。
国の重鎮がネットサーフィンしてれば辿り着く様な場所で会議?
冗談も大概にしてほしい。
新一は溜息を吐くので精いっぱいだった。
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