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唐突に画面が動いた。
一体何事かと身を乗り出した直後、映ったのは画面いっぱいの緑。
爬虫類のようでもあり、人の肌でもあるような、見たことのないソレに釘付けになる。、
忙しなく動き、時折謎の鳴き声らしき音を拾う。
そして、目が映る。
ぎょろりとした猫のように細長い瞳孔、汚泥のような濁り方をした白目部分。
カメラに映っていたそれは、自身とカメラの距離を開けた。仕組みを理解していたとは思えないが、偶然『そいつ』の姿がしっかりと映ったのだ。
ゴブリン。
ファンタジーやRPGでよく出る雑魚モンスター。
CGだとか疑ってる者もいたが、それを見た瞬間、新一がは鳥肌が立った。
言葉で表現するには難しい、生理的嫌悪感。
ニタリと歪む醜悪な笑み。一目見た瞬間、作り物ではないと理解した。
『ギャギャギャ』
興味を無くしたのか、機材を放り投げると、画面は通路らしき空間を映す。
その道をゴブリンがズルリ、ズルリ、と大きな何かを引きずり、奥へ行く。
その手に握られていたのは、人間。
先ほど笑いながら、宣伝をしていた若者は、既に反応は無く、陥没した頭から血を流しながら無抵抗に引きずられる。
ただ、うつろな目でカメラを見つめると、口をパクパクと動かした。
その時、新一は理解してしまった。
彼が最後に言った言葉の意味。
―― た す け て 。
そこでやっと、金縛りから解放された新一はページを閉じた。
その後、そのサイトは一時的に封鎖され、次に解放されたときにはその放送履歴は消えていた。
更にいえば、コミュニティも消えていた。
それがまた『先ほどの映像が夢でなかった』事をより鮮明に理解させ、めまいにも近い感覚を覚えた。
その日以降、テレビなどではダンジョンについて大きく取り上げられ、何人もの行方不明者の報告もあったことを知る。
その後、国のトップがダンジョンへの立ち入り禁止と、周辺への自治として、自衛隊とは別の武力部隊を配置する事を明言した事で、世間は再び荒れた。
しかし新一はこの時すでに、ダンジョンの脅威がいつ自身に牙を向くかを明確にすることにシフトし始めていた。
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