プロローグ

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 ポロン♪  PCから流れるゲームのチャット音に気付き、新一はすぐに返事を返す。  数度のやり取りの後、夜も遅いという事でその場は解散となった。  テレビのリモコンに手を伸ばし、電源をつけると先ほど話題に上がったダンジョンのニュースが流れていた。 『昨夜七時過ぎ、東京新宿区にて新たなダンジョンと思わしき入り口が道路中央にあると、一般人から警察へ通報がありました。  人通りの多い場所にダンジョンが現れたことで、周辺は一時パニックとなり、多数の負傷者が出るといった被害が出ております。また、通報を受けて二時間後には特殊部隊が現場に到着、道路は現在完全封鎖となりました』 (昨日の七時過ぎ……、今は夜の一時過ぎだから、丸一日以上前ってことか。テレビを見なかったせいで情報が遅れたな。)  アナウンサーが語り終えると画面が切り替わり、昼間の映像に切り替わる。  母親らしき女性が涙ながらに『娘がいない、一緒に買い物帰りに歩いていたのに! お願いします、だれか娘を知りませんか!』と、必死に訴える。  ダンジョン入り口を封鎖する部隊の人間にも縋りつくが、彼らは一切取り合わさない。  それどころか厳しい目で、母親に立ち去るように命ずる。  すると、周囲で様子を見ていた野次馬が『少しは協力しろ! お前らは入り口をただ突っ立ってるだけか!』とヤジを飛ばす奴らまで現れはじめた。    酷い時だと、石を投げつける者まで出る始末で、それに対して盾を持った部隊が動き出し彼らを鎮圧する。  こんな光景が、すでに五年も前から続いている。  日本で見つかったらダンジョンは今回の物を含め、全てで五つ。  一つは先ほどの新宿区、他には名古屋、仙台、沖縄、北海道と各地に散らばっている。  これでもまだ、日本は少ないくらいで、アメリカだとすでに三十近いダンジョンが発見されているらしい。どの国もダンジョンによる被害が酷く、それぞれの国は自国内の治安維持で手一杯という状態だった。
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