プロローグ

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 現状、ダンジョンの被害とは、大きく分けて二つ。  出現時、周辺にいる生き物をランダムでダンジョン内に取り込む『暴食』と呼ばれる現象。  これはダンジョンの規模が大きければ大きいほど、範囲は広く時間も伸びる。  とある国では、小さな町の人々がこれによって消失したという噂が流れている。  もう一つは『スタンピード』とよばれる、内部の魔物の大放出である。  当初、ダンジョンへの対応に困った総理大臣は、観察と厳重警戒という判断を取った。  だが、三年目の春にそれは突然起きた。  地の底から響くような地鳴り、そして入り口から怒涛のように湧き出る魔物の数々。  突然現れた化け物の存在に、ダンジョンというものに慣れ始め、観光なんて言う暢気な事をしていた周囲の人間を、手当たり次第に食い散らかした。  もちろん、現地に配属されていた特殊部隊たちは平和な日本であるにも関わらず、しっかりとした武装をしていた為、被害を出しつつもそれらを撃退した。  だが、問題はそれだけで済まなかった。  三年という短いスパンでの魔物があふれ出る、そして多くの死傷者が出たという事態に、政治家たちは大臣や首相を大きく批判。  一般人達も同様に部隊を批判した。 『守れなかった』の一言だ。  さんざん、観光だファンタジーだと、囃し立てていた奴らは身の危険を感じると、唐突に責任の所在を突きだしたのだ。  その後、総理大臣が何度か入れ分かり、ダンジョンが発生した地区は厳重な監視下のに置かれる事が決まる。  総理大臣の変更はさほど重要ではなかったが、ダンジョンが監視下置かれることに新一は、小さく息をつくのだった。  そして、今日。  ついに自分の住む東京にダンジョンが出来た事を知った。 (何が『そんな危険な奴がいつ近所に現れるか』だ。がっつり忘れてんじゃねぇか)  さらに場所をよくよく見れば新宿区と、ほぼ隣と言えるくらい近い。  新一が住む家は、渋谷区の比較的静かな立地にある。  都会と言われてはいるが、探せば静かな土地は割と存在する。  そこに一人で、アパートで暮らしてるわけだが……まさか、近所にダンジョンが生まれるは夢にも思わなかった。
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