第二十一章 蒲公英が咲く前に

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 もしかして、死保が現世に俺たちを留めておいたのは、影響度ではなく甲斐の状態が悪いせいだったのかもしれない。甲斐は、死保に戻れる余力もなく、消え続けていた。ここで、仕事が終了となってしまえば、甲斐は現世から動けず、消滅となってしまうだろう。 「最後に、全員で見送りたいけど、織田さんは二人きりにしておいて欲しいと言うだろうね……」  俺のチームは成仏が少なすぎる。だから、せめて甲斐は、安らかな眠りで送っておきたい。  新悟と話し込んでいると、時間になってしまっていた。俺は新悟にサンドイッチを持たせると、玄関まで送った。 「兄さん、行ってきます」 「はい。気をつけてね」  誰もいなかったので、新悟は俺にキスすると走っていった。 「……仲がいいよね……」  誰もいないと思っていたが、壁から松下の目が覗いていた。 「松下さんにも、寝起きでキスはしているでしょう?」 「私とは、キス以上できないのは、おかしいですよね……私も何か成果を上げれば、できるのでしょうか……」  それは俺にも分からない。でも、最近は肉体関係が全てではないと思ってきた。 「松下さん。大好きですよ」 「はい。頑張って仕事をしてきます!」      
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