第一章 雪解けず燃える

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 当初は山火事だと思われていたが、そこには使われていない古い家があり、建物火災であったと分かった。消防が現場に駆け付けたが、山の中で消火栓のようなものはなく、又、余りの寒さに持ってきた水も凍ってしまった。  吹雪のためヘリコプターでの放水もできず、建物は全焼した。  そして吹雪が止んだ頃、燃え尽きた家の中を検証すると、そこには焼死体がごろごろと転がっていた。 「合計二十三人分の焼死体が発見されました」  二十三人を自殺と判断した、警察も凄い。 「集団自殺と判断されましたよ」  俺が疑問に思っていると、雨之目が補足してくれた。ここに居たメンバーの殆どは、同じ団体に所属していて、その団体は死を崇拝していた。 「死を崇拝ですか?死神信仰みたいなものですか?」 「まだ調査中だったけどね、死は誰にでも必ずやってくる、死を意識する事で、人はより良く生きられるというものだった。それだけでは、まあ、普通なのだけど、そこに派生した集団が焼死の人々だね」  人生は余りにも辛い、未来よりも死を選ぼうと集まった集団らしい。 「では、集団自殺なのですか?」  雨之目が微妙に固まり、雪矢が首を振っていた。 「……見た目は集団自殺でしたよ。でも、その中に、どう考えても、自殺しないという人も含まれていた」  日本ではプロファイリングというものは、あまり聞かない。多少は採用されているのかもしれないが、プロファイリングで犯人像を割り出すという参考資料にはなるが、被害者像が合っていないという検証はない。 「入江 昴、二十五歳。公務員で、市役所で年金相談などをしていました。入江は、結婚式の翌日だったのですよ!そこで、自殺ですか?」  俺に聞かれても困るが、どういう結婚だったのか雨之目に聞いてみた。 「まあ、子供が出来ちゃったので結婚になったらしいですけどね……」  彼女の両親に責任を取れと責められて、結婚に至ったらしい。では、結婚を苦にしての自殺だと思ってしまうが、そこは違っているらしい。 「入江は実家が農家で跡取りでした。もう、入江の両親は嫁と孫の二重の喜びで、家を建てる計画をしていました。入江も両親の余りの喜び様と、周囲の祝福で幸せだと言っていました」  幸せに包まれていて、しかも、子供が生まれる事を心待ちにしていた。未来を持っている状態で、自殺はおかしいという。
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