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「穂波〜経済どうだった?私は61点だったよ!本当は59点なんだけど、先生が間違えて丸してて…って穂波?」
凛ちゃんがテストを持って遊びに来てくれたが、当の私は顔を上げる元気さえ無かった。
「…76点」
何重にも折り跡の付いたテストをぶっきらぼうに見せる。
「それで落ち込んでんの?平均60点なんだし普通にいいじゃん」
「普通じゃ意味無いよ!…こんなんじゃ渕先生に見てもらえない」
自分の中では学年一位…は無理でもクラス上位やせめて80点は取りたかった。取れるように必死に勉強したのに。
しかし現実は厳しく、付いてこない結果に落ち込んでしまう。
「まあ、まだ次もあるしさ」
「だいぶ精神とやる気を削ぎ落とされたけどね」
渕先生とは対称的に、私は経済担当の先生が苦手だった。太った怖めのベテラン教師で、生徒のことを考えずに専門用語で話し出す。そのくせ分からないと言えば怒り出すし、みんなからの評判も悪いハズレの先生だったのだ。現にクラス平均は学年最下位で欠点保持者も多く、さっきの授業でも散々私達を詰った。
「鬼の松田の授業だし。そんな気にすることじゃないって」
「あーもうっ経済嫌い!勉強嫌い‼」
「…でも渕先生は?」
「〜好き!」
こうして私の貴重な一年は、先生に気づかれることなく細々と過ぎて行った。
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