高校二年生

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日本史の初めての中間テストが終わり、今日は返却日だ。 先生は返す時にひとこと的確なアドバイスをしてくれるらしい。頑張ったなとかここは苦手だからちゃんと復習しろとか簡潔なことを。それも人気の秘密だと凛ちゃんが言っていた。 「学年トップはこのクラスのやつで97点だ」 先生はそれだけ言うと、出席番号順に名前を呼んでいく。ドキドキしつつも自分の中で自信はあった。 「山岸ー」 後ろから3番目の出席番号でいつも呼ばれるまで暇を持て余しているが今回は一瞬だった。名前を呼ばれ慌てて席を立つ。 「はっはい」 先生は座高が高いのか席にいる時は分からなかったが、足を大きく広げてだるそうな猫背で教卓裏の丸椅子に座っていた。 じっと私の答案用紙を見た後、同じ様に私のことをじっと見つめた。 「あの…先生?」 声をかけられてやっと我に戻り、テストを返してきた。 その答案用紙の右上には『97』とやけに達筆な文字で書かれていた。 「…やった」 私は小さくガッツポーズをした。 昨年の経済の悔しさもあり、喜びは人一倍だ。 しかし期待していた先生からのアドバイスがない。もう先生は次の子の名前を呼んでおり、私の方なんて見ていなかった。 (まあ、私が受け持ってもらうのは初めてだし比較対象がないもんね) そう自分に言い聞かして、97と書かれた先生の赤文字をそっと撫でた。
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