出会い

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教師らしくあげた前髪、はきはきとしたしゃべり方。変わったところはあったけど、間違いなくあの時の教育実習生だった。 (それに、茶色のスーツ・・・) こんな服を着ている人は稀なはずだ。 ー…センセーちゃんと先生になれたんですね。 ー…あ、今噛んだ?でもごまかした。 一つ一つの仕草が目に入って、内容などは全く頭に入らず、時間だけがすぐに過ぎた。 「ー…というわけで、話を終わらせてもらいます。最後に何か質問のある生徒はいますか?」 ああ、もう終わってしまう。せっかく会うことができたのに・・・ 「はい!」 気づくと私は、無意識のうちに手を挙げていた。 「じゃあその一番前の子」 「え・・・いや・・・その・・・」 ああ、視線を感じる。先生からも、クラス中からも。普段授業ちゃんと聞いてないやつが急に手を上げたら驚くよね・・・何か聞かなきゃ。 ー…先生は彼女いるんですか? ダメダメ。気になるけど、前も聞いたし。 ー…昨年この学校で教育実習に来ましたよね? でももし違うかったら恥ずかしいし・・・それにまったく関係ない気がする。 そもそも何で今日うちに来てるんだっけ?ちゃんと話を聞かず参加したので、まったく趣旨をつかめていないのだ。 「えーと・・・?」 沈黙が長引き不思議そうな顔で見てくる先生。私はぱっと黒板を見ると、最初に先生が書いた『高校入試について』というおぼつかない文字が目に入った。 「・・・ててください」 「え?」 ぼそっと呟いた私の言葉は届かなかったみたいで、聞き返されてしまった。 「私もそこに行くんで、待ってて下さい!!」 なので今度は学校中に響き渡るくらい大きな声で言った。・・・自分でもどうかしてると思う。 教室中が静寂に包まれ、クラスの一人が小声で隣の子に話しかけると、途端にざわざわと小声でみんなが話し始めた。 (やってしまった・・・!) やっと我に返り、自分の言動に驚く。 (恥ずかしい!消えたい・・・よりにもよって先生の前で・・・) 勢いであげた腰を、下を向きそっと着席すると、 「あははははははは」 と大きな笑い声が聞こえた。それは正面の先生からだった。 「来春、学校で会うのを待ってるよ。山岸穂波さん」 そう言って微笑んだ顔はあの時とは違う余裕のある笑顔だったけど、とてつもなくかっこよかったので、自分の過ちなどどうでもよくなってしまった。 そしてチャイムはなり、魔法が解けたかのように気づけば先生はいなくなっていた。
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