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どんよりと曇った空は、落ちてきそうな程に重く、昼過ぎに雪が降り出した。
深々とした冷えは、じわりと地面から浮き上がってくるようだ。
ここはマンションの高層階であったが、じわじわと足元から寒さがやってくるのには
変わりがない。
「……雪だ」
始めは舞う程度の雪であったが、夕方になると本格的に降ってきた。
そして、夜になると更に雪が増し風も吹いてきていた。
雪の夜は静かで、自分の声がよく聞こえる。
自分の声に耳を澄ませていると、心の声まで聞こえているような気分になる。
「……死保に帰るかな……」
スカウトという仕事を死保から受けていたが、期間も満了となるし、
成果もあげたのでもう帰らなくてはいけない。
「そうか、もう帰ってしまうのか……」
寂しそうに、松下が呟いていた。
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