第一章 雪解けず燃える

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 どんよりと曇った空は、落ちてきそうな程に重く、昼過ぎに雪が降り出した。  深々とした冷えは、じわりと地面から浮き上がってくるようだ。 ここはマンションの高層階であったが、じわじわと足元から寒さがやってくるのには 変わりがない。 「……雪だ」  始めは舞う程度の雪であったが、夕方になると本格的に降ってきた。 そして、夜になると更に雪が増し風も吹いてきていた。  雪の夜は静かで、自分の声がよく聞こえる。 自分の声に耳を澄ませていると、心の声まで聞こえているような気分になる。 「……死保に帰るかな……」  スカウトという仕事を死保から受けていたが、期間も満了となるし、 成果もあげたのでもう帰らなくてはいけない。 「そうか、もう帰ってしまうのか……」  寂しそうに、松下が呟いていた。
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