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そして今、私達は屋上に立っている。
空は私たちを拒むように厚い雲で覆われ、風が強く私達に吹き荒んでいる。
私達がここへ揃ってもう5分は過ぎていた。
酒井くんは向かいの柵に寄りかかってどこかを眺めている。
「話って?」
先に口を開いたのは酒井くんだった。
心臓が一段と深く音を立てる。
酒井くんはおもむろにこちらへ振り返って、今度は背中を柵に預けた。
私は大きく息を吸い込んで、口を開く。
「私ずっと酒井くんのこと怪しんでたの。この人何か隠してるんじゃないか、って」
「うん」
「それでね、酒井くんのこと観察し始めたの」
「うん」
私はそこから、観察で得られたことを全て話した。
ぶつかった時の違和感。物に触らないこと。ドアを重そうに開けること。変な歩き方の規則性。
相槌は全て「うん」だけだった。
「………昨日、見ちゃったの、私。酒井くんが1階の空き教室に入るとこ」
「…」
相手を真っ直ぐ見据える。
彼の口は何も言わない。
心臓がどくどくと脈打つ。苦しい。
ひとつ深呼吸をした。
口を開く。
「あなた、幽霊なんでしょう?」
酒井くんの目を見ると、ばちんと視線が当たった。
その目は、朝よりも深い黒をしていた。
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