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「俺も話があるんだ」
酒井くんは反対に振り返って、またどこかを眺め始めてしまった。
「俺、廃墟が好きなんだよね」
「え?」
「いいから聞いて」
あまりに素っ頓狂な返しに疑問を滲ませると、澄んだ低い声で制され、私は押し黙った。
「ある日さ、山奥に廃校があるって聞いて。でもそこに行くまでに山道を3時間くらい登らなきゃいけないから、今はもう誰も近づいかないみたいなの。でも廃墟好きとしてはやっぱり行きたいよね、って思って、俺は計画立てて準備して、そこの廃校に訪れたわけ。
それがまあ古い学校でさ、床も所々抜けてるし、ドアも取れてたり壊れかけだったり。もう全体的にボロボロ。
なのになんだか悪い気が漂ってなくて。
それで入ってみたら、人がわんさかいるの。学生達が楽しそうに。
きっと皆気づいてないんだろうなぁ。自分の置かれた環境。
そこで俺、何でだろう、楽しそう、って思っちゃって。ある教室になんとなーく座ってたら、隣の子がじっと見つめてくるから話しかけちゃって。本当は一日で帰ろうと思ってたんだけど、こうなっちゃった以上もう少し居ようかな、って気になって。まあそれが結果的に悪い方向に傾いちゃったんだけど。
扶実ちゃんが俺の事怪しんでずっと監視?してたのは気づいてたよ。まあ、離れるきっかけになるかなって思って少し泳がせてた。ごめんね?」
………何を話しているのこの人は。
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