学校と暗事

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しかし、なにか足りないような気がする。 全体をぼうと見つめて、周りの生徒と見比べると、その男子生徒は教科書、ノート、筆記用具など、勉強道具を何一つ持っていないことに気づいた。 机の横に掛けられたバッグにも、それらが入っている気配はない。 教科書はまだ配られていないのかもしれないし、私だって忘れることもあるからまだしも、勉強道具何一つ持たないで学校に来るなんて、ここに何しに来てるんだっての。まあ、先程まで寝ていた私も言えたものではないけれど。 初対面にも関わらず、心の奥で強めな言葉を彼に投げつける。 第一印象は「やる気のない高校生」にすり替わることになった。 「俺の顔、そんなに変か?」 「へっ!?」 いきなり話しかけられ、ほとんど反射のように驚く。 先程毒を吐いていたから余計だ。 「なんかずっとこっち見てるから」 そこで初めて彼の顔を見れば爽やかな好青年という感じで、きっとモテるんだろうなぁ、と質問の回答を考える頭の奥で、そういう考えがかすりと気取(けど)った。
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