学校と暗事

4/16
前へ
/16ページ
次へ
「教科書もノートも筆記用具も持ってきてないから。初日なのに大丈夫?」 「…あぁ、そっか、そうだね、忘れてた」 忘れてた、って!これはもうドジとは言えないのでは。 「よかったら貸そうか?」 「あ、いいの?ありがとう」 笑顔でお礼を言われる。 意外と素直な人だな、と思った。 その人はずるずると机を私の方へ寄せてきて、私は教科書を半分ずつ机に乗るように移動させる。 ルーズリーフとシャーペンを取り出して手渡そうとすると、 「あ、俺大丈夫。いらないよ」 と手で制された。 「え、なんで?遠慮しなくていいよ。あ、この可愛いの嫌だったら…ほら、シンプルなのあるし」 「いやいや、俺…ほら、ノート取らなくてもある程度分かっちゃう派の人だからさ。教科書だけで十分」 「ん…そう」 まあ世の中にはそういう人も居るのかもしれないし、初対面の人にこれ以上突っかかるのも癪だからと、私はそこで手を引っ込めた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加