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「そういえば名前なんていうの?」
「私?前口扶実だけど…」
「扶実ちゃんね。俺は酒井奏。よろしくね」
いきなりの名前呼びに驚きながらも、驚いただけで気にする性格ではないので、よろしくね、と笑顔で返した。
あまりにも自然な流れで忘れていたが、どうやらこの人は転校生で間違いないようだった。
この学校は転校生が多く、そのせいか朝来たら誰か知らない人がいて、次の日来たら見知った顔が突然居なくなっているということはしょっちゅうだった。
先生も紹介することすらもう面倒だといった感じで、風の噂であの子は転校生だ、あの子は転校した、と流れるのが先生の紹介代わりになっていた。
だからこういうことには人より慣れていると思う。
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