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「俺、父親になるんだな。」
私の耳元で嬉しそうに囁く。彼の中には産む選択しかないようだ。
「私、慎ちゃんの子産んでもいいの?」
「バカだな。産んでいいに決まってるだろ。莉奈にはこれから苦労をかけると思うけど、一緒に親になろ?」
「慎ちゃん…嬉しい。」
私は彼にしがみつくように思いっきり抱きしめた。彼もギュッと抱きしめてくれた。
「あ、強く抱きしめたら赤ちゃん苦しいな。」
「あはは、大丈夫だよ。」
彼はパッと私から離れ、お腹の赤ちゃんを心配する。
「でも良かった。俺さ、別れ話されるのかと思って電話を切った後からずっとビビってたんだ。」
「別れ話なんてするはずないよ。これからも、ね。」
「莉奈…大好きだよ。」
良い雰囲気の中、彼の顔が私に近づいてくる。私も目を閉じて彼からのキスを待つ。
ーー ガチャ
キスまで後少しというところで、部屋のドアが開いた。母が紅茶を持ってきてくれたようだ。私と彼は慌てて距離をとる。
「あら、ごめんなさい。お母さん、紅茶持ってくるタイミング間違えたみたいね。」
母はサッと紅茶を置き、そそくさと部屋のドアを閉める。
私と彼はお互い顔を見合わせて笑った。
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