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「なぁ、莉奈の両親は妊娠の事知ってるのか?」
「うん、知ってる。」
「…そうか。」
彼の顔つきが急に変わり、すくっと立ち上がった。
「どうしたの?」
「莉奈の両親と話をしてくる。」
「わ、私も行く。」
内心ドキドキしながら、2人で父と母のいるリビングへ向かった。
「お父さん、お母さん、話があるんだけど…。」
私が声をかけると、ソファーに座っている父はチラッと私達の方を見るだけだった。キッチンで洗い物をしている母は濡れた手を拭き、ダイニングテーブルの方に座った。
「2人とも座って。」
母に言われて私は母の前に座る。でも彼は座らずに立ったまま、深々と頭を下げ続けた。
「すみませんでした。」
私も彼の横に並び一緒に頭を下げる。すると、ソファーに座っていた父も立ち上がり母の横に無言で座った。
私と彼も頭を上げ両親の前に座る。そして4人の間には沈黙と何とも言えない空気が漂っていた。
「ちゃんと話は出来た?」
「うん。」
最初に沈黙を破り話し始めたのは母だった。私は彼の方を見て微笑む。彼も私の方を見て微笑んだ。
「俺、大学辞めて働きます。莉奈さんには苦労かけてしまうけど…でも莉奈さんもお腹の子も幸せにします。だから…莉奈さんと結婚させて下さい。」
「け、け、結婚だと!?」
父の座る椅子がガタッと後ろに下がり、表情も凄い事になっている。
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