決断

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「嘘だと言ってくれ、莉奈。」 情緒不安定な私は父の言葉にイラッとする。 「うるさいな~。そうよ、私妊娠してるの。お腹の中に赤ちゃんいるの。もう放っておいて!」 投げやりに言った言葉…。父は私の元へ近づき、右手を振り上げた。 叩かれる。 そう思い私は目をギュッと(つむ)る。しかし、いくら待っても父の手が私を叩く事はなかった。 片目をチラッと開け、父の姿を確認する。父は右手を振り上げたまま動きを止めていた。振り上げた手を震わせ、歯を食いしばり、必死に自分の動きを止めていた。 そんな父を見て、私は声を上げて泣いた。ごめんなさいごめんなさいと呪文のように繰り返し謝りながら大泣きした。 「莉奈、妊娠は悪い事じゃないよ。」 泣き崩れて床に座り込んでいる私を、母が優しく抱きしめてくれた。 「お母さぁぁん。」 私は母にしがみつき、ただただ泣き叫んだ。母はそんな私をソファーまで連れていき座らせると、温かいミルクティーを持ってきてくれた。
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