決断

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それから、私は彼と部屋に入った。そして汗だくの彼にタオルを渡す。 「サンキュー。」 彼は渡されたタオルで汗を拭き始める。 「それでね、話っていうのが……。」 私は話を切り出そうとするが、言葉が詰まってしまった。ちゃんと話をしないといけないのに…。 「何の話か分からないけどさ、話せるようになるまで待つよ。」 彼は私の頭にポンと手を乗せて笑ってくれた。 慎ちゃん…大好き。 私は頭の上にある彼の手を握り、涙を流しながら笑った。 慎ちゃんは私より年上で今は大学1年生だ。 いつも元気で明るく友達も多い。そんな彼との出会いは去年…高校のバスケ部で先輩後輩だった私と彼だったが、高校卒業を前に彼から告白され付き合いが始まった。 「莉奈…。」 彼は何かを察したのか後ろから私を抱きしめてくれた。 「慎ちゃん、私のお腹触ってみて。」 「お腹を?」 彼は言われたとおり、私のお腹をそっと触る。 「お腹にね…赤ちゃんいるの…。私と慎ちゃんの赤ちゃんが。」 やっと言えた。 でも怖くて彼の顔は見れなかった。 「赤…ちゃん?」 彼はお腹からパッと手を離した。そして私の前に回り込んで両手で肩を掴んできた。 「本当か?」 「…うん。」 (うつむ)きながら小さな声で答える私を、今度は前から優しく抱きしめた。
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