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「お待たせ。今日は何を聴いているの?」
「The Pillows」
「最近よく聴いてるね」
「焦燥と期待。危うさと眩しさ。そんな気分」
「もう高校も終わるもんね」
「それを抱えて生きるしかないから、私たちは感情に振り回される」
「ヒトミもそうなの?」
「脱出する方法は、二つしかまだ知らない」
言いながら、彼女は突然ガードレールから倒れ出した、って、え、ちょっと!
「危ないよ!」
どうにか受け止めることができた。一瞬で汗が噴き出してきた。
「一つは、止まること。完全停止」
「下手したら死んじゃうよ! わかってる?」
「もう一つは、止めないこと。永遠に思考すること」
怒りながら、ちょっと別のドキドキを感じている自分が恥ずかしい。
一応ケガがないかざっと見て、無事なようで安心する。
ただ、安堵した僕のことを、彼女はじっと、睨むように見つめた。
「な、なに?」
「でもたまには、感情に振り回されたい時もある」
「いたっ、え、なんでしかもグーって!」
やっぱり彼女はわからない。
でもどうしてか、かわいいと思えてしまおうのは、僕が好きって感情に、振り回されてるからなのかな。
歩き出す彼女において行かれないように、横に並ぶ。
まだ日が沈まないで良かった。
これだけ鮮やかに橙に染められていたら、赤くなっていることなんて、わからないもんね。
了
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