その先を僕は知らない

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 夕焼けを背にして、彼女は立っていた。  ガードレールの上、器用にバランスをとって。  ヘッドホンから聞こえている曲は、今日は何だろう。聴きながら、何を見ているんだろう。視線の先、というより、思考の先を、僕は知りたい。  教えてもらったところで、ちゃんとわかったことはないんだけど。  難しいことを考えている時もあれば、今日の晩御飯はなんだろうということを考えている時もある。でも必ず、話は変な方向に行くんだけど。  皆はそのせいで彼女に近づかない。話がかみ合わないから。でも実は別に彼女の中では全く脱線していなくて、全部同じ話をしているだけだったりする。それを理解するのが大変だから、皆距離を置き始める。  おかげで僕は彼女の一番傍にいられるから、いいんだけど。  ただ最近は、放課後に彼女の姿を委員会終わりにこうして、知らない場所を見ている彼女を目にすると、不安になる。  僕らはもう二ヶ月過ぎたら卒業で、大学は別々。大学に入ったら、彼女の言ってることがわかる人が増える。僕でもなんとなくわかるんだから、同じ学力の人間なら、すぐにわかるに違いない。  そうしたら、僕は、僕の立ち位置は、何処になるんだろう。  彼女の影さえ届かないこの距離が、道路を挟む隔たりが、今の僕には怖いとさえ思える。  それでも、やっぱり傍にいたい気持ちが強くて、不安も恐怖も見ないふりで、僕は笑って彼女に近づく。  人出がほしいと言われて、もう属してもいない委員会活動をしているのは、そのための勇気を、毎日充電するため。  そういうのは全部、胸にとどめるために。
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