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…きれい…だれ?
カタン
…え?
小さく音をさせ席をたったオルテが、その麗人に歩み寄る。
ガバッとオルテにしがみつく、麗人。
オルテが何か耳元で一言呟き落ち着かせ、此方に振り返り、「…すまない。」と言い残し…二人は店外に出ていく。
…え、なに?すまないって、なに?
さっきまでいた給仕も驚き、哀れむような視線をチサキに向けた。
いたたまれず、うつむき震え出す肩を自分で抱き締める。
すぐに一人戻ってきたオルテが震えるチサキの肩を抱き、急ぎの用ができた、明日の見送りは行けないと、口早に伝えてきてうなじの処置もそこそこに店を出る。
…心が凍てつくように寒い。
繋いだ手が悴む。
「チサキ?」
腕を広げ抱き上げようと顔を覗きこんでくる。サッと身を引き半歩下がる。
「まだ、痛むか?」
オルテは労るようにチサキのうなじを見やり腰に腕を回して歩幅を合わせ歩いてくれる。
魔法がとけ隣を見上げ、視線が近くなったはずなのに遠のいたように感じる。
重い足を進め船の前で、じゃぁ、と別れた。
船から伸びた橋を渡り、甲板からそっと振り返るとあの麗人がいつの間にかオルテの横に立っていて、こちらの視線に気付き微笑し手をふってきた。
…なに?自分の方がオルテに似合ってるって言いたいの?
手を振り返すことができず、オルテを見ることもできず船内に入り食堂のテーブルに臥せる。
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