A-side.

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A-side.

信仰とは愛情より高次のものだと思った。だから僕は、彼女を信仰することにした。なによりも高潔で、なによりも流麗な彼女を。 初めは信仰の真似事でしかなかった。 例えば、彼女の言うことに一切の反論をすることなく、忠実に従ってみたり。例えば、彼女の一日の行動や予定を細かく調べたり。例えば、バイトで稼いだ金を全て彼女のために使ったり。しかし所詮は真似事だ。特に変化はなく、一年が過ぎた。 変わったのはその年のクリスマスのことだった。その日ついに彼女への信仰がホンモノとなった。 今まで壊れ物のように扱ってきた彼女を、初めて冒して、犯して、侵した。関係が一線を越えたことで、彼女への信仰は一線を画した。それはもはや崇拝と言ってもいいほどに。 その日から、彼女は僕にとって唯一で絶対の神となった。僕も今までのような擬似的で児戯的な真似事ではない、心からの信仰を──崇拝を彼女へ向けるようになった。 しかし、だからこそ、彼女が僕以外の人間と同じ空間に存在することなど赦せるはずもなかった。 一本一本が精密で扇を思わせるような黒髪も、何者をも跪かせるように黒々とした切れ長の目も、黄金比により設計されたと錯覚するほど均衡のとれた美しい肢体も、冷淡で無色の声も、上品な匂いも、印象的で落ち着いた動作も、近寄りがたい雰囲気も、吐く息も、吸う息も、彼女の全ても、彼女でない全ても。何一つ、余すところなく、彼女を僕だけのものにしたかった。 だから僕は決めたのだ。彼女への愛や、信仰や、崇拝を完全無欠なものにしよう、と。 そうして僕は、彼女を監禁することにした。
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