A-side.

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監禁といっても彼女の腕を拘束したり、口を封じたりなんてことはしなかった。彼女が誰の目にも触れず、僕の信仰を享受してくれればそれでよかったのだから。僕が彼女を崇拝し、彼女は僕のために存在する。なんて美しい共生関係だろう。 監禁初日、彼女に詳細な事情を説明すると、快く受け容れてくれた。僕が信仰していることを知って嬉しそうにさえしていたのだ。こんな幸せな日々が永遠に続けばいいと思った。 けれどそんな関係はすぐに壊れてしまう。ただ養われているだけという罪悪感や、外に一切出ることができない不自由さ、そして何より、僕の信仰心が彼女を追い詰めていたのだろう。 彼女は家へ帰りたがるようになった。そして、僕との関係も解消したいと洩らすようになった。 これは違うと思った。どうして分かってくれないんだろう。僕の神様は彼女だけで、彼女を信仰していいのは僕だけなのに。彼女への信仰のためなら僕は他の全てを犠牲にできるのに。 僕から彼女を奪うことは彼女でも赦せなかった。 共生生活から半年が過ぎた頃、ついに彼女は外に出てしまった。すぐ気づけたからそう遠くないところで捕まえることができたが、僕の猛進的な妄信は儚くも喪われてしまった。 そして、僕は彼女の殺害を決意する。恨んだとか、憎んだとか、嫌ったとかそんな俗っぽい感情ではなかった。この行いが僕の信仰を再生するに違いないと確信したのだ。僕の神が落ちぶれたなら、僕が殺して、信仰を永遠のものにしよう。
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