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B-side.
信仰とは愛情より高次のものだと思った。だから私は、彼に信仰してもらうことにした。私がなによりも盲愛し、なによりも純愛する彼に。
初め、彼の信仰は可愛らしいものだった。
例えば、私の言うことに一切の反論をすることなく、忠実に従ってみたり。例えば、私の一日の行動や予定を細かく調べ上げたり。例えば、バイトで稼いだお金を全て私のために使ってくれたり。そんなことをしてくれる彼を愛おしく思った。しかし、彼は不服そうだった。
それが変わったのはその年のクリスマスのことだった。その日ついに彼の信仰がホンモノとなった。
今まで散々私を壊れ物のように扱ってきたくせに、その日彼は私のことを、冒し、犯し、侵した。苛烈な愛に胸が踊った。
関係が一線を越えたからだろうか、私への信仰は一線を画した壮大なものとなった。それはもはや崇拝と言ってもいいほどに。
その日から私は、彼にとって唯一で絶対の、神のような存在になった。
彼の信仰はホンモノになったのだ。私もそれに合わせ、彼に相応しい信仰対象になることを心の底から望んだ。児戯的な思いは捨て、彼を愛し、慈しみ、愛惜した。
だからこそ、私は彼以外を視界に入れたくなんてなかった。
粗野で性のこと以外を考えることの出来ない、下品な脳みそをぶら下げた男も。男を誘惑して自分の価値を高めようとする好色で卑しい女も。立場を利用し、生徒に手を出そうとする下等な教師も。自分の思い通りに子どもが動かないと情緒不安定になり、喚き散らす身勝手な両親も。利用できない人間はすぐに見限る不誠実な友人も。先輩も、後輩も。犬も、猫も。動物という動物も、生物という生物も。何一つ、彼以外、目に入れたくなかった。
だから私は決めたのだ。彼への恋慕や、慈愛や、盲愛を完全無欠なものにしよう、と。
そして私は私を監禁させることにした。
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