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「なっ、鳴海さん…っ」
「ちょっとっ、先輩っ!」
そろって抗議の声をあげられ、鳴海と旭は笑い出す。そしてあっさり降伏した。
「まあさ、なんだかんだ言いつつ、お互い、雨降って地固まったってことでいいのかな。俺は結構本気でホッとした。最初はどうなることかと思ったけどね。りょうちゃん、よかったね」
「ああ、お互いに」
旭の言葉に鳴海も頷いた。その脳裡に、ひとつの言葉が甦る。
『私にできるのは、決して許されることのない罪を、これからも巨大な十字架として背負いつづけていくこと、それだけなのでしょうか――』
どんなに苦しくとも、そうするしかあるまいと思う。
小夜とまひるを喪ったあの日から、己の心に刻まれた烙印が消えることはない。この先も一生――
そう思って、鳴海は元教え子の姿を思い浮かべる。
彼女は彼女の十字架を、自分は自分の十字架を背負いつづけていくことになるだろう。この先も、生きていくかぎり、ずっと……。
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