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ル・シエル・エトワール――星空……。
妻、小夜の名をイメージした店名を掲げるようになって1年。
亡き妻は甘い物を好み、とりわけチョコレートに目がなかった。
鳴海自身、日頃から間食をする習慣はなく、調理にもチョコレートにも、まるで関心はなかった。それでもショコラティエを目指し、自分の店を持ったのは、それによって己に生きる理由を見いだすためだった。
そうでもしなければ、今日を明日に繋いで踏みこたえることができなかった。
厨房に立ちつづけることで、鳴海はかろうじて己の生を放棄せずに存えることができた。そんな自分に訪れた、ひとつの出逢い――
「行こうか」
ようやく顔を上げた葵をうながし、鳴海は立ち上がる。
柄杓を入れた水桶を手に歩き出した鳴海の横に、葵が並んだ。
「奥様とまひるちゃん、チョコレート気に入ってくれるといいんですけど」
「大丈夫。ふたりとも喜んでるよ」
鳴海の言葉に、葵は口許を綻ばせた。
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