第12章

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 前方からやってきた人影に、葵が1歩下がって道を空ける。互いに挨拶を交わしながら一列になってすれ違った直後、葵が後方から呼びかけてきた。 「あの、鳴海さん」 「ん?」 「今日は連れてきてくださって、ありがとうございました」  鳴海は足を止めて振り返った。そして、こちらこそ、と返した。その胸に、あたたかなものがこみあげる。  ふたたび歩き出すと、葵が足を速めて追いついてきた。 「小夜と、なに話してた?」  葵が並んだタイミングで尋ねてみる。そんな鳴海を、葵は振り仰いだ。  一度開きかけた口唇が思いなおしたように閉ざされる。それから、ひと呼吸置いてもう一度開いた。 「内緒です。女同士の秘密の話」  口許に浮かぶのは、満面の笑み。  その顔を見て、鳴海の口許にも微笑が閃いた。  横にいる葵から転じて視線を上げると、青空の中に浮かんでいるのは真昼の白い月。鳴海はその月を、穏やかな気持ちで眩しく見つめた。    ~end ~
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