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「日本で一番の街になる。あかんか」 「そんなぼんやりした目標で、うんって言うんは小学生ぐらいでっせ」 「人口日本一。どうや、具体的やで」 「なんか華に欠けますなあ」  チッ、細かいやつやな、と心では思うものの、ここは商売で培った血が脈々と受け継がれた土地柄。 「あきませんかー」とおもてづらはあくまでもにこやかに、しかし心の中では「何かええ算段はないかいな」とソロバンをはじくのであった。  オオサカにおいて、口にのぼる言葉と心に芽生える言葉は違う。それは当然のことであり、常識で勿論である。  そのためオオサカでなされるコミュニケーションは、会話を小耳にはさみながらお互いの腹の内を探りあう。  テレパシーが超能力などと騒がれた時期もあったが、ちゃんちゃらおかしい。オオサカ人は人の心を読む術を誰しもが使えるのだ。対する者の本音を知らずして、ゼニのやり取りなどできるはずがない。 「お。これはどうや」 「なんでんの」 「トーキョードームやがな」 「あの宿敵ベースボール団体の本拠地でんな」 「あれをオオサカにするんや」 「おお。ほんならトラ対デカブツの収益は総取りでんな」 「もうめっさ来るで、観客」 「一方的なゲームになったら客足も遠のくから、勝ったり負けたりにしてな」 「そらええわ、盛り上がるで」  スポーツマンシップだとか八百長はダメだとか、そんな眠たいモラルは観客動員数 イコール ゼニの前には無力であった。
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