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「あとでゆっくり、って思ってさ。そのまま置いといてよ」
と、一応は言っておく。もちろんいくらこの人だって、僕に無断で捨てたりはしないだろうけど。
「そういえば」しばらくして何かを思い出したのか、椿さんが顔を向けずに言った。「あんたにデートのお誘いが来てたぞ」
「デート?」
「ああ。もうひとりの国塚あおいの持っているクローンに一瞬だけ電源が入った。位置情報を抜かれるのをわかった上でしたことだろう。だから、お誘いだよ」
そう言って、椿さんは地図の表示された画面を僕に向けた。池袋の西口から大塚方面へ下った先の、ホテル街のど真ん中だった。なるほど、デートと呼ぶに相応しい、艶っぽい一角だ。ひょっとすると艶っぽ過ぎるかもしれない。
「ホットライン、か。そういうことね」
僕は今になって納得してつぶやいた。椿さんは一瞬また訝しげに目を眇めたが、それについての説明はしなかった。
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