コンベア

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顔が好き。もっと見ていたい。とかから始まって、いつの間にか、守りたい、になっている。それがふつう。 ぼくは違った。顔が好き。とか感じる間もなく、女の人が寄ってくる。モテてはない。大勢に同時に求愛されるような、浮ついた経験はない。 一人現れて、付き合って、その人と別れると翌日、別の人が求愛してくる。できすぎだ。でもそのベルトコンベア制が、中学から二十年、崩れていない。 そして、寄ってきてくれる人たち。彼女らもぼくに、顔が好き、とか感じていない。彼女らは最初からぼくを守りたい。わけを聞いても解らないって言う。 解らないっていうのは解る。ぼくも彼女らと同じだから解る。ベルトコンベアに乗って、女の人が目の前に登場するたび、すぐ守りたくなる。で、その情の出所は解らない。 十九人目の交際相手と別れた日、Cさんと出会った。石畳の大通りに垂直に交わる、狭苦しい道で、彼女は壁を塗装していた。ローラーで地道に。次はこの人か、うん、守りたいね、とぼくは心底思った。彼女が振り返る前から愛しい。振り返ったらもっと愛しかった。その日からぼくの部屋にいっしょに住んでいる。
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