私の左手と、君の心の中。

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 バスロータリーの柱に寄りかかって、優を待っている。  結局、2つのことができないままだ。1つは自分の心を好き以外で表すこと。もう1つは、この左手で優に触れること。でも本当は、どちらも必要なかった。  人の気持ちが分かるのは安心だ。けれど、知らないままの私に生まれたふわふわした気持ちでないと、自分は映らない。  綾音、と待っていた声がする。  夕暮れの教室でも、二人きりの屋上でもないけれど、私は覚悟を決めた。
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