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「あれ?あ、こっちか?いや、こっちだ。これで、と」
どこにでもいそうなOL。カリスマ性なんて欠片もない。ただ与えられた仕事をこなすことが精一杯の毎日。
この日も、書類とにらめっこをしながら、残業しないと終わらない仕事と向き合っている。
あ、そうだ。自己紹介を忘れてた。
私の名前は瀬戸紗彩。名前を言えば誰でも分かる有名私大を出て、曲がりなりにも社会人として働いている。
「よし。今日のノルマ達成~!」
小さくガッツポーズした私に、それを待っていたように声をかけてくる人がいた。
「この後の予定ってある?」
その声だけで、誰だか分かった私は、声の主を見ることもなく気軽に答える。
「ん?無いよ~。帰ってビールでも飲もうかなぁって思ってる」
そう言ってから、その方を見た。
そんな私に、輪をかけて気軽に返してくる。
「よし。それなら決定だ。もちろん奢りだよ」
北條沙耶香という先輩だ。違う部署だというのに、わざわざ私の部署まで来てくれたのは嬉しい。
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