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「はい、私、店長の姪なんです」
そうだ、確かに「兼行」と名乗っていた。「きょうへいくん」なんて呼ばれてどきどきしていたから、正直それどころじゃなかったのだ。なるほど、玄関の関係で人に貸すわけにはいかないと聞いていたが、住み込みで働く身内なら問題はないということか。杏平は割とすんなり納得した。
「そうだったんですか…」
踊り場に差し掛かったところで、一番の重要ポイント。途端に元気がみなぎってきた。
一言のうちに、満面の笑み。杏平は勢いつけてさや果のほうへ振り向き、確める。
「じゃあ、お隣さんですね!」
「はい、よろしくお願いします」
首を傾げるようにまた、小さなお辞儀をひとつして、さや果も微笑みを返すのだった。
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