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そして自分自身の物語を終わらすかのように、握っていたペンを置こうとした時、かたんとテーブルの上に何かが乗った。
見るとそこには、頼んでもいないグラスの姿。
驚いてぱっと顔を上げると、さっきレジにいた店員がこちらを見て微笑んでいた。
「あの……」
戸惑う崇の言葉に、店員は括った髪を揺らしてにこりと笑う。
「小説、書いてるんですか?」
「え? あ、はい。どうして……わかったんですか?」
彼女は指先を唇に当てるとクスッと笑った。
「だっていつも難しそうな顔をして原稿用紙と睨めっこしてるから」
無邪気なその笑顔に、崇は恥ずかしさを隠すように頭を掻きながら下を向くと、空白のままの原稿用紙がちらりと目に映った。
「小説、楽しみにしてますね」
そう言って彼女は微笑むと、空になったグラスを下げてレジの方へと戻って行く。
その後ろ姿を見ながら、再び静かになったテーブルにふと目を向けると、真っ白な原稿用紙とアイスコーヒー。
からんと氷が奏でたその音に、あの初雪と同じ温もりを感じた。
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