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ある日、「ねぇ、ちょっと付き合って」と彼女から呼び出された。待ち合わせの最寄り駅前に向かうと、彼女が待っていた。
「遅い、女の子を待たせるんじゃない」
「ごめん、ごめん」
「じゃあ、行くよ」
彼女が向かった先は、駅前ロータリーにあるタクシー乗場だった。車内に乗ると彼女は携帯を取り出し、指定した住所を言い出した。
「おい、どこ行くんだよ」
「いいから、いいから」
タクシーが走ること、数十分。
着いた先は、自動車販売店だった。
「どういうことだよ」
「いいから、いいから」
彼女は慣れた様子で、展示されている車を見渡しながら歩いていると、店員が彼女に声をかけていた。
「連れてきました」
彼女がそう言うと、女性店員は俺に「お待ちしてました」と挨拶した。俺は何が何だかわからなかった。
「どういうこと?」
率直な感想だった。
「乗ってみたい車があるんだ」
「お前、免許持ってたっけ?」
「ないよ」
「じゃあ、無理じゃん」
「だから、あなたが運転して。免許持ってるでしょ」
確かに身分証明書代わりに取った免許は持ってるが、自家用車は持っていなかった。
「いや、金ないぞ。それに俺、ペーパーだし」
「お金はいいの」
そう言い出して、彼女は手もとのハンドバッグから封筒を取り出した。
「お前、それって」
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