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 誰が何を言おうと、どんなに馬鹿にされても、彼はきっと真珠の化石を探し続けるのに違いない。真珠の化石の存在と、信じる自分を堅く信じて。    自分の信じたものに全てを賭け、それに殉じさえしようという富田の一途さ、そして純粋さが、三輪には心の底から眩しく、羨ましい。  すでに手放してしまった気持ちを想い、三輪は目を伏せた。 「もう一度、あたしも信じられたら……」  再び手が届きそうに思えつつ、でも、そう思うほどに遠ざかる気持ち。  もし信じ直すきっかけが、縁(よすが)があったなら……。  眼鏡をかけ直し、三輪は自嘲的な息を洩らす。  ふがいない自分を嗤う、寂しい苦笑。    灰色に染まる重苦しい胸を抱え、三輪は家路をたどり始めた。  待つ者の誰もない、冷え切った家へ。
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