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 言葉に表わせない疼痛が、三輪のまぶたを重苦しく閉ざす。  乱れた息を密かに整える三輪の前で、両角が繰り言を重ねる。 「何でトモと二人でいるってだけで、そんな話になってんだ? 部長のクラス、どうなって……」  胸の痛みをひた隠し、三輪は両角を見上げた。  ふと耳にした噂が、三輪の脳裏を過る。  ――両角は、告白(こく)った女子をフっているらしい。もう何人も――  女子クラスに広がるそんな噂を思い出しながら、三輪は首を捻るばかりの両角に一歩迫った。 「それはね、両角くん」 「な、何だ? 部長……」  いつも威勢のいい両角が、怯んだように仰け反った。  半歩後ずさった両角に、三輪は無感情に言い渡す。 「両角くん、空手にしか興味がないでしょ? だからよ。それと高館くんと仲良過ぎて、二人ともイケメンだから。だからエジキになるの。それはある意味、すごく光栄なことなのよ? 分かった?」 「全っ然分からん。これだから女はイヤだ。向かってくる女はもっとイヤだけどな、部長……」  苦り切った表情で呻く両角。  その顔を見ながら、三輪はふと思う。     
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