28人が本棚に入れています
本棚に追加
三輪は、心の底からの賛辞を送る。
賞賛の眼差しを浴びた両角は、強情な眉根を険しく寄せた。
しかしその頬はほんのり赤く、目許は笑っている。
「どっちも好きでやってんだ。大したこたあない」
「でも、そんなに空手が好きなら、うちじゃなくて空手部に入ればよかったのに。両角くんなら、すぐにレギュラーだと思うけど」
すると両角は、小馬鹿にした響きで鼻を鳴らした。
「部活じゃつまらん。やっぱりオレは、舐めプじゃなくて、もっと際どい勝負をしたいんだ。もっともっと鍛錬しないとな」
熱意と力がみなぎる口調で言い、両角は窓の外に視線を移した。三輪も彼の望む先を追うと、窓ガラスを通して放課後のグラウンドが見える。
「そういえば、イチも相当走り込んでるらしいな」
彼は賛意が一杯に篭った口調で独り言を綴る。
「あいつ、大会はまだまだだってのに、すげえヤツだ。オレも負けてられねえ」
そこで両角の表情が硬くこわばった。
「その割には、タイムが伸びなくて悩んでるらしいけどな、この二ヶ月くらい。陸上部の連中も心配してたけど、何か悩みでもあるのか……」
向き直った彼と目線がかち合い、三輪はついと顔を背けた。
最初のコメントを投稿しよう!