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 富田との交渉から、二日後の放課後。  普段と何変わらず登校していた三輪は、いつものように鞄を下げて化学準備室に向かった。  帰る生徒、部活に出る生徒、様々な足音が交錯する廊下を行く三輪だったが、不意に彼女を呼び止める声が響いた。 「お、部長!」  三輪が振り向くと、長身の男子生徒が大股でやってくる。  広い肩幅、逞しいが粗野ではない四肢、それに剛直な眉根が彼の気骨を物語る。 「あら、両角くん」  肩越しに鞄を担いだ両角が、向き直った三輪の前で足を止めた。 「部長、今から化学室か?」  両角の問いに、三輪はレンズの奥でにっこり笑った。 「そうよ。帳簿をメンテしないといけないし、後輩の子たちがヘンなゲームやり過ぎないように見張っておかないとね」  彼女は、部活動の責任者としての表情で付け加える。 「あんまりひどいと、先生に睨まれちゃう」 「部長も大変だよな、ホント」  心底同情的に洩らし、両角がはあ、とため息をつく。  申し訳なさそうに、うつむく彼。 「面倒事ばっか部長に押し付けて、ホントに悪ぃ」 「そんなこと、気にしなくて大丈夫だから。両角くん」  肩を落とした両角をわずかに見上げ、三輪はくすっと笑いを洩らす。     
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