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 それでも、前の埃っぽい狭い檻と比べたらましだった。それは僕が男だったからというのも関係してたんだろう。そうだと気づいたのはもう少し大人になってからだ。 「ねぇっ、今日の客、もう二度と連れて来ないで。人を見下しやがって、もし、次、連れて来たら、殺してやるから!」  時々、堪えきれなくてそんなことを言った。主人は快くそれを聞き入れてくれたが、それは僕を気に入っていたからだったようだ。  一人部屋といえど小さくて壁も薄いから、隣から声が聞こえた。隣は女の子だったらしく、男の客が訪れるとあられもない声を上げていた。何をしているか察せるくらいに、いつの間にか年を重ねていた。 「こんなのはもう嫌」  そう呟く女の子の声が聞こえた。客のいない夜のことだった。嫌なら主人に言えばいいのにと僕が告げると彼女が笑った。 「そんなの、聞いてもらえる筈ないじゃない。あなたはいいね、何をしたんだか知らないけど、気に入られてるんだものね」  嫌味を十分に含んだ言い方だった。     
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