インタビュー 1970年某日、マーリア・オウティネンの自宅にて

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……大変興味深いお話です。それで、どうなったのですか? 「運命の瞬間は、「うちの子」を抱き始めてちょうど一カ月と二週間が経った深夜でした。夢の中で、私は真っ赤に熱された大岩を抱いているんです。熱くて熱くて、火傷の痕が残ったらどうしようと思っていると、目が覚めました」 「すると、なんと抱きかかえている「うちの子」が、夢で見た大岩のように熱くなっているんです。あまりの熱さに、私はその時初めて「うちの子」を手放してしまいました。しゅうしゅうと音を立てて、「うちの子」は膨大な熱を発散しています。明らかに異常事態ですが、内線を掛けることも忘れて、私は魅入られたようにそれを見つめていました」 「何分経ったのか、それとも数秒だったのか、「うちの子」の表面にひびが入りました。割れ目から白く鋭い爪が見えています。中から何かが生まれ出ようとしてるんです」 「私は思わず、「頑張れ!」と叫びました。声に応えたのか、ひびはどんどん大きくなります」 「そして、遂に、「うちの子」が完全に割れました。中から出て来たのは、粘液にまみれた、黒くて小さな魔竜の雛でした。前に図鑑で見たのとそっくり同じです。柔らかそうな鱗を纏っていて、緑色の大きな瞳をクリクリと動かしているんです」 「雛は、私をじっと見つめています。なんて可愛らしいんでしょう! 私は、手を伸ばしました。すると雛は、シーツの上をズルズルと一生懸命這いずって、私に向かってきました。私は、ごく自然に、そうするのが当たり前のように、そっとその子を抱き上げました」 「私に抱かれた雛は、満足気に鳴き声を上げました。産声です。ちょっと金属質で耳障りで、部屋の外にも聞こえるくらいの音量でしたけど」 「ここで私は、その子を抱っこしたまま内線を掛けました。ただ一言、「無事に産まれました」と……」
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