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……それはなんとも、壮絶な体験でしたね。つまり、貴女たちは魔竜の卵をずっと抱卵していたということなんですね?
「その通りです。私たちが命じられたのは、自分たちが将来乗りこなすことになる魔竜を、自分自身で孵化させることだったのです」
「数日後、雛を抱いて私たちは集合しました。部隊長は笑って「おめでとう、お母さんたち!」と。それで、詳しい事情を説明してくれました。本来、私たちがこのような任務につく予定はなかったのです。雛たちはランスカで開発された人造魔竜で、金属製のカプセルに受精卵と魔法薬を注入することで「生産」される品種でした。専用の孵卵器も我が国は輸入していたのですが、海路での輸送中に事故があって、卵は既に届いているのに孵卵器は届かないという事態になっていたんです」
「代わりの孵卵器が届くのには一年かかる。調達計画に遅れを生じさせるわけにはいきません。そこで採用されたのが、昔ながらの方法でした」
「ランスカやブリタンニアでは古くから、魔竜の卵は火山の熱か、清らかな処女の素肌の「ぬくもり」によって孵ると言われていました。そのことは先の大戦中、学術的にも立証されていたそうで、「それならうちの「女の子」たちを使おう!」という話になったようです」
「軍事機密だったとはいえ、私たちになんらの説明もなくあのような大変な任務を命じたのは、今でもあんまりと言えばあんまりだったと思っています。私たちの将来のパートナーになり、また我が子のように可愛がる存在を、私たち自身のぬくもりで孵すのだと事前に告げられていたなら、私たちだってどんなにか任務に精励したことでしょう」
「雛はよく懐きました。どんどん大きくなって、抱っこできたのは産まれてから二週間まででしたけど……私はその子にタハティと名付けました」
「本当に、良い子でした。私の自慢の息子です。最期の時も一緒でした。停戦の前日に赤軍の高射砲が直撃して……最後の最後まで私のぬくもりを欲していました。本当に甘えん坊だったんです……」
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