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首をかしげながら、顔を少し覗き込んでやった。
……って、寝てるのか!?
抗議するように、吾輩は全力で声を張り上げる。ついでに、大きく膨らんだ鼻ちょうちんもつついて割ってやった。
飛び起きるホームレス。そして、勝ち誇る吾輩をそっとベンチに座らせると、ホームレスは頭を掻いて小さく笑みをつくった。
「ごめんな。鳥を見ると安心してしまって、つい寝てしまったよ」
ははっ、と声を上げるも、ホームレスの目はどこか悲しげである。
どうしたのだ? と聞こうにも、言葉が通じない。が、吾輩の意思を感じ取ったのか、ホームレスはポツリポツリと語り始めた。
「俺の実家は養鶏所でな、毎日毎日ニワトリの世話ばかりしてたんだよ。結局、実家も潰れ、俺は都会に出たがリストラ。今や、しがないホームレスさ」
なるほど。このホームレスも過酷な人生を歩んできたということなのか。
……吾輩と同じだな。
吾輩は、そっとホームレスの傍らに寄り添ってやった。吾輩にしてやれることは、その程度である。
「お、お前……」
お前、ではない。吾輩は七面鳥である。
ぽろぽろと涙を流すホームレスに寄り添い続ける吾輩。
すると、少し経ったころ、聞き覚えのある声が遠くから届いてきた。
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