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「七面鳥! どこだぁぁぁっ!?」
マズイ、追手だ。しかも、声がだんだん近づいてきているではないか。
隠れるしかない……っ!
慌ててベンチを下り、ホームレスの陰に隠れるようにして息をひそめる。
直後、大きなオリを持った黒服の二人組が公園に入ってきた。
「すみません、そこの男性! 七面鳥を見ませんでしたか!?」
「七面鳥、ですか?」
「ええ、私どもの主人が仕入れた七面鳥なのですが、それが脱走してしまい……」
「なるほど……」
このとき、吾輩は失念していた。隠れていても、ホームレスが吾輩を黒服に売れば終わってしまうのだということを。
……万事、休すか。
死を覚悟した吾輩。だが、聞こえてきた言葉は予想の正反対のものだった。
「いえ、公園内では見てないですね」
なんと、ホームレスが吾輩を庇ってくれたのだ。
ホームレス、お前ぇ……。
なんといいホームレスなのだろう。
嘘をついてまで、出会ったばかりの吾輩を助けてくれるなど、吾輩を罵倒した子どもやその親たちとは大違いだ。
この場に黒服がいなければ、歓喜に打ち震え、踊りながら盛大に鳴き声を轟かせているところである。
フッ、去るがよい黒服よ。吾輩はこのホームレスとともに……。
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