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突然世界が崩れだして、男の子の声が遮られる。
揺れる地面に眩みだす視界。自分の体が自分のものじゃないような気がして、形容しがたい不快感に襲われる。
聞き逃した言葉は、なぜか一番大事なものだった気がして、私は触れないと分かっていても咄嗟に手伸ばした。
「………それじゃあ、またね」
抵抗もむなしく、泥にまみれた手で指切りをした光景を最後に私は夢の世界から消えていく。
結局その光景がいつのものなのか、どこのものなのか。
整理するほどの情報すら得られないまま、私は再び宙を舞っていた。
ああもしかすると、夢が記憶を元に作られること自体が間違っているかもしれない。
さっき見たものもしょせん夢。目が覚めたら忘れてしまう儚いものだと割りきって、私はまた、ゆっくりとその目を閉じていった。
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