上映開始 2

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「あとはプロジェクターとパソコンを繋ぐだけっと、、、そっち終わった?」 「はい!たぶん大丈夫です!」 「りょうかい、手が空いたら配線のほう手伝ってくんない?」 準備を始めてからものの数分で、そこには簡易的な映画館が作られた。といってもこれは今どきの学校とかでも実用的に使われているもので特別というものではない。学期が変わるたびに生徒会に申請しているようだが、実績の関係からか買うことはできなかったらしい。部長であり生徒会役員でもあった潤さんは、そのたびに色々言われたとか、、、 「優花さん、ちょっと来てもらっていい?」 「あ、はい!」 カメラと三脚をもった博人さんが、優花と一緒に後ろのほうへ歩いていく。一体何をするのだろうと二人を注視していると、やがて博人さんは場所を決めて三脚を広げ始めた。どうやら上映風景を録画するようだ。 ……まったく、どうしてそこまで緊張感を高めることばかりするのか。 それが勉強にもなるし大切だということを理解しながらも、それでも嫌なものは嫌だと言い出した犯人(恐らく潤さん)を呪う。今さら直しようもない映画の物語を頭に思い浮かべながら、私は時間が過ぎるのを待った。 上映が始まるまで、あと30分ほど時間がある。 しかしその時間の間やることもなく、しかも誰かに行動を見られながら過ごすというのは中々に辛い。 それなのに徐々に観客も増えてきていて、施設の人たちも続々と移動してきていた。 「あら潤くん。久しぶりねぇ」 「あ、こんにちは!元気でしたか?」 車いすに乗っている女性に声を掛けられ、潤さんは動かしていた手を止める。知り合いか何かなのだろうか。仲睦まじく話す二人の姿を見ていると、突然背中に重みがのしかかってきた。 「ありゃ、潤は今取り込み中かー」 「美咲さん!、、、なにしてるんですか?」 「恵ちゃんと遊んでるー。今なら抵抗しないからお得だよ」 「あ、恵のこと忘れてた、、、てかまだ体調悪いの!?もう始まっちゃうよ!?」 「んー、、、だいじょーぶ、、、」 恵はそう言うが、頭をフラフラさせながらなので説得力がない。まさかあの恵がこんなに乗り物するとは…… 「あれ?てか電車は大丈夫じゃなかった?」 「んーん……夏休みは毎日薬飲んでたんだけど、今日は起きるのが遅くて忘れたの」 「なにそれ自業自得じゃん」
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